この短編の技術的論文は元々はザップライン論文に対するオピニオン論文として書かれたものです。https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1053811919309474
したがって、このタイトルも元々の文脈でのみ意味が分かるというものなのですが、残念ながらザップライン論文を掲載した雑誌には論文を載せてもらえなかったため(笑)、適切な文脈から外れて若干とんちんかんなタイトルとなってしまいました。共著者の一人が論文受理後に教えてくれたのですが、まあ、気にしないでおきましょう。
ジャーナルのページ
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7873913/
この論文の要点は、ザップラインは単体でも非常に優れたラインノイズフィルターとしてのパフォーマンスを持つのですが(原著者が「ほぼ完璧」と自賛するぐらい)、実は簡単にその上をいくことができるよ、というアイディアとその実証を示すことです。すなわち、クリーンラインのアルゴリズムをザップラインの後に適用すればよいのです。どうしてそれを私が予言できたのでしょうか?それはZapLineの説明を読んでその本質が空間フィルタ法であると理解できたとき、クリーンラインが時間領域上の非定常性をうまく処理することを思い出して、組み合わせれば最強になるんじゃないかなと考えたからです。
レビュアの一人が、この論文には目新しい発見も開発もないから出版する価値がない、と批判しました。たしかに、それは一理あります。ザップラインもクリーンラインも発表済みだし、私にとっては他人のふんどしですから。しかし、ある洞察に基づく予言とそれを支持する結果を共有するということは、科学のコミュニケーションの基本的な目的であり、やはり大切なことです。言われてみれば簡単なことでも、だからといって誰にとっても直ちに自明というわけではないからです。
ところで、ザップラインの原著者のアラン ドゥシェヴェニェさんには本論文を書くにあたって親切にいろいろ教えていただきました。特に、「ほぼ完璧」という原著者の自賛に対して私があからさまに足を取っているのに、大人の度量で対応してもらったことには感謝としか言いようがありません。いつか借りを返せる機会がきたらと思います。