次にCrystal Disk Mark(以下にリンク)でデータの読み書きの速度を調べました。データを読み込む速度が毎回ひどく違っているのに対し、書き込みの速度のほうが断然速くて安定しているという不可思議な結果でした。RAMではなくて、HDDの不良ですかね?私は彼に新しいHDDを購入するよう勧め、交換することで問題が解決するか試してみようと提案しました。
頭皮上計測脳波のノイズ除去には、私はいつもEEGLABのプラグインであるclean_rawdata()とICAを組にして使います。clean_rawdata()は、今では知名度も出てきたartifact subspace reconstruction (ASR)を目玉のアルゴリズムとして持っています。このclean_rawdata()というプラグインは、私のかつての同僚であるChristian Kotheが書いたものです。彼はBCILABの作者で、その中に非常に高性能なノイズ除去のパイプラインが含まれていました。私はそれをオフライン用に仕立て直してくれないかと、ある日クリスチャンに直談判したのです。彼は私の依頼を快諾してくれて、たった数日でこれを作ってくれたものです。私はただラッパーを書いたり、使い勝手の部分で細々とした改良を加えたり、これにclean_rawdataという凡庸な命名をしただけにすぎません。この歴史的経緯は以下の論文のサプリメントの第6節にちょこっと書きました。興味のある人は読んでみてください。https://academic.oup.com/cercorcomms/article/1/1/tgaa046/5881803#207580614 さて、ASRはICAにとっては理想的な前処理となります。ASRは非定常的なアプローチ(移動窓方式)をとりますが、ICAは定常性が非常に重要な前提になっています。ASRは天文学的に大きな外れ値が来てもへっちゃらですが、ICAにそんな値を与えると即死する可能性があり、仮にエラーが出なくても結果は使い物になりません。 ICAの適用(クリックだけ)に比べるとASRの使い勝手はやや癖がありますが、閾値にSD = 20を使うという目安(これについての定量的な検討は、同僚のChiyuanの論文をご覧ください https://ieeexplore.ieee.org/abstract/document/8768041 “…Conclusions: Empirical results show that the optimal ASR parameter is between 20 and 30, balancing between removing non-brain signals and retaining brain activities.“) に従って、他は適当に試してみれば大体わかります。
私は「脳の電場」第2版(Nunez and Srinivasan, 2006)の日本語訳という事業に2018年11月から取り組んでいます。残念ながら日本ではまだ出版社が見つかっていませんが、気にせず進めています。各章がだいたい50ページぐらいあって、それを訳すのに大体3-4か月かかります。この本は全11章530ページからなり、それに加えて12個の付録74ページ、索引の6ページを合わせると全610ページあります。今のところ第3章は飛ばして訳を進めています。これはある出版社のアドバイスで短縮版を出す可能性を考慮し、この本の首席著者のポール・ヌニェス博士にその相談をしたところ第3章を削るとよいというアドバイスをもらったためです。私は訳しながら読み進めているので、おそらくこの本を読んだ人たちの中で最も遅い読者でしょう。非常に楽しく翻訳を進めています。
Automated pipeline for preprocessing scalp-recorded EEG data for phase-amplitude coupling analysis of children with and without infantile spasms Sunday December 6, 2020 5:15 PM – 6:45 PM Your Role: First Author
SCAEはSwartz Center for Audio Engineeringの略でskyと同じ音で読みます。これはカリフォルニア大学サンディエゴ校のスウォーツ計算神経科学センターの非公式かつ小さなサークルで、2018年に発足しました。現在のメンバーは私とある院生だけです。ARTA http://www.artalabs.hr/をつかったパラメータの計測と、スピーカーワークショップhttp://www.claudionegro.com/を使ったスピーカーエンクロージャーとクロスオーバーネットワークの設計と最適化、それから今回のような制作も行っています。
エンクロージャーのデザインは内容量1.5リットルの密閉立方体としました。吸音材はParts ExpressのAcousta-stufを21グラム装填してあります。机の上の専有面積はわずか14 cm 四方です。ドライバーのQtはスペックシートによると大体0.9ぐらいなので、密閉型のデザインが適しています。密閉型はバスレフ型に比べると低音が淋しくなりがちですが、ただでさえ小口径で歪率が苦しいところにバスレフでもうひと働きしてもらおうというのは、忍びないように思います。それにせっかく優秀な歪率特性を持つドライバーを使っても、低音が破綻していては無下の瑕瑾というものです。ここはなるべく優等生のまま無理をさせないように仕上げることにします。それに、もしハイパスフィルタを備えたサブウーファーからの出力が供給できる環境になったら、その時に密閉のほうが真価を発揮できるという、先の楽しみも残せます。
このGYREEのロゴは、私にとってはいわば小さなアート作品です。実は社名の前にこのロゴのデザインがあって、そこから社名が取られたのです。このロゴは、GYREEという辞書には載っていない造語の繰り返しからなっています。もしあなたが脳電の研究者なら、この円環(gyre)の、いわば「ウロボロス」構造のロゴの中にある隠されたシンボル、GYRE-EEG-GYRE-EEG-…を見逃すことはないでしょう。われらが「脳の電場」Nunez and Srinivasan (2006)によれば、頭皮上計測可能な大きさの脳電の主要な起源は、複数の大脳皮質回(gyri)にまたがる電流源で、その大きさは6.45平方センチと見積もられています。GYRE-EEG-GYRE-EEG-…(円環、脳電、円環、脳電)と綴られた円環を見ながらGYREE、GYREEを発音すると、脳電の起源である「大脳皮質回、大脳皮質回」と唱えることになるのです。これぞ現代の脳電曼荼羅。このコンセプトでさらに遊ぶために、このロゴを一筆書きで描いてからフーリエ変換し、それをフーリエ級数のサブセットが構成するエピサイクルの多重の円周の運動(gyri)で経時的に描いてみました。これは、ダジャレの数学的拡張です。フーリエ変換は脳電の解析に多用されますが、古代ギリシア人の哲学者に言わせれば、フーリエ変換は世界が円周で構成されているという信仰告白ということになるのかもしれません(もっとも、分解可能であるということと、構成されているということが同じかどうかは、議論の余地がありそうです。)